求人広告は「高いコミュニケーションスキル」を求めます。上司は、ある候補者には「適切なコンピテンシーがない」と言います。コーチは「能力を高めましょう」と言います。三つの言葉が、まるで一つの意味であるかのように使われています。実際には違いますし、混同すると気づきにくい間違いが生まれます。見当違いのものを基準に採用したり、実際に抱えている問題を解決するはずのなかった講座に一か月を費やしたりすることです。
能力:誰かに教わる前から備えている力
能力とは、土台にある力のことです。たとえば、数字のパターンをすばやくつかむこと、複数の情報を同時に頭に保持すること、返答を考えながら口頭の議論を追うことなどです。能力は特定の仕事に結びついたものではなく一般的なもので、スキルと比べるとゆっくりとしか変わらない傾向があります。
仕事では、能力は「楽にこなせる」という形で表れます。スケジュールの各部分がどうかみ合うかを一目で見抜く人は、スケジュール管理の訓練を受けたことがなくても、能力を示しています。能力は学習を速めることがありますが、誰がどこに行き着くかを決めるものではありません。練習や状況も影響するからです。
スキル:身につけて、実際にやってみせられること
スキルとは、できるようになった具体的な事柄です。ピボットテーブルの作成、データベースへのクエリの記述、顧客への明確なメールの作成、ふりかえりの会の進行。それぞれがスキルです。スキルは具体的で、たいてい確認できます。誰かに課題を渡して見守ることも、完成した成果物を見ることもできます。
その確認しやすさが、スキルが履歴書や求人広告で幅を利かせている理由です。同時に、スキルだけでは答えとして不完全である理由でもあります。二人とも会議の進行というスキルがあるのに、一人は必ず後から議事録を送り、もう一人は思い出したときにだけ送る、ということがあります。スキルは同じで、何か別のものが違うのです。
コンピテンシー:実際の場面での知識、スキル、行動
その「何か別のもの」を捉えようとするのが、コンピテンシーモデルです。コンピテンシーは一つの束です。必要な知識、使いこなせるスキル、そして実際に示す行動が、特定の状況の中で一体になっています。状況は飾りではありません。「顧客の苦情に対応する」ことは、金曜日の午後四時に怒った顧客を相手にする場合と、研修のロールプレイの場合とでは、意味が違います。
- 知識:返金の方針と、例外がどこにあるかを知っている。
- スキル:落ち着いた明確な返信を書き、白熱した電話を収めることができる。
- 行動:苦情をすぐに受け取り、落ち着きを保ち、問題を自分のこととして引き受け、約束した時期にフォローアップする。
知識とスキルは、何ができるかに関わります。行動は、何を確実にしているかに関わります。コンピテンシー診断のような自己評価は、この束のうち行動の側に位置します。できるかどうかではなく、特定の行動をどのくらいの頻度で取っているかを尋ねるものです。
三つが入れ替わると何がうまくいかなくなるか
月曜日の朝会で、ある同僚の報告がいつも曖昧だとしましょう。原因は、知識の不足(システムを十分に理解しておらず、説明できない)かもしれませんし、スキルの不足(短い報告を組み立てる方法を学んだことがない)かもしれません。行動の不足(知っていてできるのに、どこで詰まっているかを話すのを避ける)の可能性もあります。それぞれ、必要な対処が違います。
- 採用で。求人がソフトウェアツールを要件に挙げるのは、ツールは書き並べやすいからですが、チームの本当の問題は引き継ぎが文書化されていないことだったりします。新しく採用された人はそのスキルを持っているのに、問題は残ります。
- 自己啓発で。自分は「フォローアップが苦手」だと思い込み、プロジェクト管理ツールの講座に申し込み、修了しても、メッセージを放置してしまう。足りなかったのはツールではなく、習慣でした。
- フィードバックで。「もっとコミュニケーションスキルが必要だ」は、「もっと短いメールを書く」から「会議で発言する」まで、何でも意味しえます。どちらなのかを尋ねなければ、見当違いのものを直してしまうかもしれません。
役に立つ習慣があります。誰かがギャップを指摘したら、それが自分の知らないことなのか、まだできないことなのか、できるのに確実にはやっていないことなのかを確かめることです。
組織によってコンピテンシーの定義が違う理由
広く合意された唯一のコンピテンシー一覧はなく、それを作る唯一の合意された方法もありません。組織がコンピテンシーモデルをどう作っているかを調べた産業・組織心理学者たちは、そのやり方が組織ごとに大きく異なることを見いだしました(Shippmannほか、2000年)。その後の研究は、仕事そのものの丁寧な分析に基づいてコンピテンシーを定めるなど、うまく作るための指針を示しました(Campionほか、2011年)。
実際には、ある雇用主の「コミュニケーション」は観察できる行動の一覧かもしれず、別の雇用主の「コミュニケーション」は、文章力や全般的な自信まで混ぜ込んだ曖昧な見出しかもしれません。求人広告や評価シートでこの言葉が使われていたら、その下にある例を探すか、どんな行動が見られるのかを尋ねましょう。また、JobCannonの六つを含め、どんな六つの組も、同じ領域を切り分ける合理的な方法の一つであって、定義そのものではないと考えてください。
スキル監査とコンピテンシー診断の位置づけ
JobCannonでは、二つのツールが領域を分担しています。スキル監査はスキルの棚卸しで、何ができるかを見ます。コンピテンシー診断は行動を評価するもので、仕事での六つの行動をどのくらいの頻度で取っているかを見ます。どちらも能力を測るものではなく、コンピテンシー診断は自己評価であり、検証済みの測定ツールではなく、仕事での成功を予測するものでもありません。
併用すると、役に立つ食い違いが見えてくることがあります。スキルの一覧は長いのに、計画と段取りの評価が低ければ、仕事はできるけれども、まだ確実な形では行っていないことがうかがえます。逆に、習慣は強いのにスキルの一覧が薄ければ、次の一歩は規律ではなく学習だとうかがえます。結果の意味はコンピテンシー診断とは何かで、六つの領域そのものは六つの中核的な仕事のコンピテンシーで確認できます。